2009/10/26

『本当の強さ』を子供達に学ぶ 錬志会館

『本当の強さ』というのは何なのでしょう?
喧嘩に強くなることが『本当の強さ』なのでしょうか?
誰にも負けない体を持つことが『本当の強さ』なのでしょうか?

10/25(日)、別府アリーナで、空手の大会が行われると聞き、本当に強い人たちにその『本当の強さ』の意味を教えてもらおうと思いました。
そこで出会ったのが、ここ大分県に本部を置く道場

錬志会館


今年で創立二十周年を迎える空手道場の館長、そしてそこに参加している皆さんのお話を聞きながら、『本当の強さ』の意味を考えました。


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P1340989小雨だった日曜日の別府アリーナ。しかし会場に着くなり感じたのは、多くの人達の熱気。
「押忍!」という元気の良い掛け声と共に、小さな子供たちから大人まで、同じ格好で殴り合い、蹴り合う姿。
個人的に格闘技好きの私には堪らない光景なのですが、お母さんたちにはどうなんだろ?と思ってみていましたが、良く見ると試合会場の周りを囲むように声援を送っているのは、出場しているお子様のご両親。


P1350016「前へ出ろ!」とか「技を出せ!」とか、黄色い声やら太い声が飛び交っていました。
意外な光景だと感じましたが、きっと参加している皆さんにとっては、どうと言うこともない当たり前の光景なのでしょう。
まだ小学生になってないのでは?という小さなお子様から、もうすっかり大人の体付きの中学生まで、ここでは学年で分けられた子供たちがトーナメント形式で試合を行っていました。
女の子が多かったのも、驚いたことの一つです。

P1350001一試合二分という時間の中で、激しい試合が続いていましたが、試合の終わった子供達に注目していると、負けた子供はやっぱお母さんのところに走っていくんです。
そこに座り込んで泣き出す子供たち。あれだけ殴られて蹴られる訳ですから、当然でしょう。
そこで一人のお子様に声をかけさせて頂きました。一回戦で残念ながら敗退が決まり、お母さんに慰められていた佐藤竜一くん(9歳)。
本人は頭を下げて泣いていましたので、傍にいたお母さんにお話を聞きました。

P1350002お兄ちゃん(12)と妹さん(7)が先に始めた空手。竜一くんは二ヶ月遅れて参加しました。
ご自宅の向かいにたまたま錬志会館の先生がお住まいになっているのをきっかけに参加したのだそうです。
「空手をはじめて生活にメリハリをつけてくれるようになりました。挨拶も出来るようになったし、これからも続けて欲しいです。」(お母さん)
泣いている竜一くんは五分後にはすっかり元の元気な姿になっていました。

P1350030驚いたのは、殴られ蹴られた痛みから泣いているのだろうな、と思っていたのに、そうではなかったこと。負けたのが悔しく泣いていたんです。
その話を聞いてからというもの、私も試合を見る目が変わりました。
確かに子供たちはただ殴っているわけではなく、有効な打撃にするためにしっかりと踏み込んでいます。
審判たちに印象付けるために、どれだけ殴られようともしっかりと前に出ているのです。

P1350042空手の真髄を子供達の姿に見せてもらった私は、満を持して道着姿の三浦館長にお話をお聞きしました。
日出町出身の三浦館長は福岡での大学生時代に空手と出会い、関東へ就職しても空手だけは続けてきました。
30歳になった年、一念発起して地元へ凱旋。同時に錬志会館を立ち上げ、以後二十年地元大分を中心に活動を続けてきました。
今年でちょうど二十周年。この日の大会はその記念をお祝いする意味もあります。

P1350056「この二十年、色々な事がありました。『我以外皆我師』(宮本武蔵)の教えを胸に頑張っています」(三浦館長)
三浦館長と道場の話をしていると、「うち(錬志会館)のカラー」という言葉が何度か出てきました。そのカラーの意味をお聞きするとこんな言葉が返ってきたのです。
「先生になると口だけになる人というのが、空手に関わらずたくさんいます。だから先生にも、常に生徒と同じ目線でい続けられる様、指導しています。それこそが錬志会館のカラーだと思っています。」
当たり前だけど大事なこと。口で言うのは簡単ですが、それをこの目で目の当たりにすると信憑性が出てきます。

P1350050少し上級生の子供になると、試合の終わった子供たちは一目散に館長のところにやって来ます。
試合の結果を報告し、館長は数百人いる教え子の一人一人に、時に厳しく、時に優しく声を掛けます。
子供たちがこんなに積極的にお礼を言う先生があなたの学校にいましたか?
私はそこに正しい教育の姿を見た気がしました。



P1350022一般女性の部にエントリーしていた永岡せい子さんは、何と二人のお子様と家族三人で大会に参加。
実は二人のお子様が習い始めた空手を応援しているうちに、自分もやりたくなって教わり始めたという話。
「やんちゃで我慢の出来なかった子供だったんですけど、空手を始めて気持ちをコントロールすることが出来るようになったんです。」
と語る永岡さんの目はお母さんの目。


P1350073「仕事と家庭でストレスも溜まりますけど、厳しい練習で自分を追い込むと全てを忘れられて気持ち良いんですよ」
と語る永岡さんの目は、一空手家の目でした。
家族は三人とも決勝に進むという驚きの結果。二年生の長女は見事に優勝も果たしました。
ご本人は延長戦という熱戦を演じますが、残念ながら準優勝に終わりました。


実際にどんな試合が行われているのか気になる人のために、小学校一年生女子の部の決勝の様子を動画でご覧下さい。子供たちの必死さ、たくましさが伝わってきます。




P1350024まだ大人の膝長けくらいしか身長のない子供たちから、四十代を過ぎたお父さんお母さんまで、必死に戦う姿。
汗だくになった彼らが熱戦を追え、しっかりと握手する姿。
そして悔し涙を流しながら、「空手を続けます」(前出:佐藤竜一くん)と出直しを誓う子供たちの姿。
「たかが空手、だけど空手を通じて子供達に教えてもらうことがたくさんあるんです」(三浦館長)


P1350026学校や家庭で、殴られたり蹴られたりすることが少なくなってきた現代。人の痛みが分からずに、ゲーム感覚で人を傷つける子供達。
でもここにいる子供たちはどうなのでしょうか?
痛みを知り、そして優しさを覚えることが出来るのではないでしょうか?
「強さと優しさ、子供たちの長所を伸ばしてあげたい」(三浦館長)
この言葉が現実味を帯びて、私の目に飛び込んでくるのです。

P1350015『本当の強さ』とは一体なのでしょうか?
強くない私には、まだまだその本当の意味を知ることは出来ませんが、この日見た錬志会館の子供たちの『本当の強さ』は、今や社会で忘れられている『本当の強さ』だった気がします。
願わくば、この子供達が大きくなって、また次の世代の子供達に同じ『本当の強さ』を教え継いでくれる。そんな素晴らしい空手道場であり続けることを期待したいものです。

今年二十周年を迎えた大分の空手道場・錬志会館

県内には九つの道場を持ち、空手の底辺拡大に努めています。また今年東京に支部をオープンさせ、さらに飛躍を遂げようとしています。お問い合わせや詳しい内容はオフィシャルサイトをご覧下さい。

P1350088帰り際、準優勝を遂げた永岡さんにもう一度声を掛けてみました。
「残念でした!また一から出直して、次の大会は頑張ります!」
汗だくで、肩で息をする永岡さんでしたが、その目は活き活きと輝き、充実感が漲っていました。
彼女もまた、気が付かないうちに、『本当の強さ』を身に付けようとしているのかもしれませんね。

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